宗教法人は収益事業を行う場合に法人税を納める義務がありますが、この場合の収益事業とは、次に掲げる34種類の事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいいます。
なお、これらの事業に係る事業活動の一環として、又はこれに関連して行われるいわゆる付随行為も収益事業に含まれます。
1. 物品販売業 | 13. 写真業 | 25. 美容業 |
2. 不動産販売業 | 14. 席貸業 | 26. 興行業 |
3. 金銭貸付業 | 15. 旅館業 | 27. 遊技所業 |
4. 物品貸付業 | 16. 料理店業その他の飲食店業 | 28. 遊覧所業 |
5. 不動産貸付業 | 17. 周旋業 | 29. 医療保健業 |
6. 製造業 | 18. 代理業 | 30. 技芸教授業 |
7. 通信業、放送業 | 19. 仲立業 | 31. 駐車場業 |
8. 運送業、運送取扱業 | 20. 問屋業 | 32. 信用保証業 |
9. 倉庫業 | 21. 鉱業 | 33. 無体財産権の提供業 |
10. 請負業(事務処理の委託を受ける業を含みます) | 22. 土石採取業 | 34. 労働者派遣業 |
11. 印刷業 | 23. 浴場業 | |
12. 出版業 | 24. 理容業 |
宗教法人において一般的に行われていると思われる事業が収益事業に該当するかどうかの判定は、おおむね次によることになります。
お守り、お札、おみくじ等の販売のように、その売価と仕入原価との関係からみてその差額が通常の物品販売業における売買利潤ではなく、実質的な喜捨金と認められるような場合のその物品の頒布は、収益事業には該当しません。
しかし、一般の物品販売業者においても販売されているような性質の物品(例えば、絵はがき、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花、数珠、集印帳、硯墨、文鎮、メダル、楯、ペナント、キーホルダー、杯、杓子、箸、陶器等)を通常の販売価格で販売する場合には、その物品の販売は収益事業(物品販売業)に該当します。
なお、線香やろうそく、供花等の頒布であっても、専ら参詣に当たって神前、仏前等にささげるために下賜するものは、収益事業とはなりません。
宗教法人が行う墳墓地の貸付けは収益事業に該当しないこととされており、その墳墓地の貸付けには、その使用期間に応じて継続的に地代を徴収するもののほか、その貸付け当初に「永代使用料」として一定の金額を一括徴収すつものも含まれます。
宗教法人の境内地や本堂、講堂等の施設を不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供するための席貸しは全て収益事業(席貸業)に該当し、会議、研修等の娯楽、遊興又は慰安の用以外の用に供するための席貸しも、国、地方公共団体の用に供するためのものなど一定の要件に該当するものを除き、収益事業に該当します。
宗教法人が所有する宿泊施設に信者や参詣人を宿泊させて宿泊料を受ける行為は、その宿泊料をいかなる名目で受けるときであっても、収益事業(旅館業)に該当します。
しかし、宗教活動に関連して利用される簡易な共同宿泊施設で、その宿泊料の額が全ての利用者につき1泊1,000円(食事を提供するものについては、2食付きで1,500円)以下となっているものの経営は、収益事業には該当しません。
宗教法人がその所蔵している物品又は保管の委託を受けたものを常設の宝物館等において観覧させる行為は、収益事業には該当しません。
宗教法人が茶道教室、生花教室等を開設し、茶道、生花等特定の技芸を教授する事業は、収益事業(技芸教授業)に該当します。
この場合の特定の技芸としては、茶道、生花のほか、洋裁、和裁、着物着付け、編物、手芸、料理、理容、美容、演劇、演芸、舞踊、舞踏、音楽、絵画、書道、写真、工芸、デザイン(レタリングを含みます。)等があります。
なお、これらの技芸の教授には、通信教育によるもののほか、免許、卒業資格、段位、級、師範、名取り等の一定の資格、称号等だけを付与するものも含まれます。
宗教法人が境内の一部を時間極め等で不特定又は多数の者に随時駐車させるもののほか、月極め等で相当期間にわたり継続して同一人に駐車場所を提供する事業は、収益事業(駐車場業)に該当します。
このほか、駐車場に適する土地を駐車場所として一括して貸し付ける事業も同様に取り扱われます。
宗教法人が神前結婚、仏前結婚等の挙式を行う行為で本来の宗教活動の一部と認められるものは収益事業に該当しませんが、挙式後の披露宴における宴会場の席貸し、飲食物の提供、衣装等の物品の貸付け、記念写真の撮影又はこれらの行為のあっせん等は、収益事業に該当します。
法人税の課税標準となる所得金額は、各事業年度の売上等の益金の額から原価、販売費及び一般管理費等の損金の額を控除して計算しますが、宗教法人については、収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課税されますので、収益事業に係る収支、資産及び負債と収益事業以外の事業に係る収支、資産及び負債とを区分して経理し、収益事業に係る所得金額を計算することとされています。
この場合、収益事業と収益事業以外の事業とに共通する費用又は損失の額については、その費用又は損失の性質等に応ずる、例えば使用面積、従業員数等の合理的な基準により、それぞれの事業に配賦し、その配賦したところに基づいて経理することになります。なお、資産の区分経理については実際問題として困難な場合もありますので、例えば収益事業と収益事業以外の事業とに共用されている資産(それぞれの事業ごとに専用されている部分が明らかな場合を除きます。)について、これを収益事業の資産としての区分経理はしないで、決算のときにその償却費を使用面積割合等によって区分し、収益事業の経費を計算するというような方法によっても差し支えありません。